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言語を超えるデザインの世界

プロフィール

イラストレーター:菅野愛希さん

絵描きの庭

「探究Ⅰ」授業:「新しいノートの書き方」

はじめに

絵や図を使いながらグラフィックレコーディングという手法で伝え、表現するイラストレーターの菅野愛希さん。自分の「好きなこと」「得意なこと」にどう向き合って新しい価値を創造していったのか。相手に伝える手法を「話す」「文章にする」ではなく「描くこと」で表現している菅野さんのストーリーをぜひご覧ください。

仕事・取り組みのきっかけ

私はもともとコミュニケーションをすることがとても苦手でした。特に高校生の頃は周りとうまく馴染むことができず。悩んでいた時期がありました。年齢を重ねるにつれ、私は社会の中で生きていくのだろうという不安でいっぱいでした。
しかし発想を変え、苦手なことではなく、自分の好きなことに目を向けたことで見る景色が一変しました。それが絵を描くことでした。得意な絵を通して苦手なコミュニケーションを補い、人と繋がる、人の役に立つ兆しを見つけることができました。
最初は自分の好きなことで周りの人の役に立ち、幸せにできるということを知り、絵を描くボランティアからスタートしました。そこから徐々にお仕事を頂けるようになり、フリーランスのデザイナーとしての道を歩き出した矢先、コロナが流行り始めました。多くのイベントがなくなっていく中、私の知人がオンラインイベントを企画することになりました。そこで、その方からオンラインの座談会の記録を頼まれました。「グラレコっていうものがあるんだけど、あきちゃんやってみない?」そこで初めて出会ったのがグラフィックレコーディング(以下グラレコ)という存在でした。

グラフィックレコーディングって?

ミーティングや講演の内容を、文字とイラストを使って記録する方法のこと。参加者がリアルタイムで記録を共有できるよう、大きなホワイトボードや模造紙に描かれるスタイルが一般的。セッションが終わったあとも写真を撮って内容を残すことができる。最近では、iPad等を使って描く、デジタル媒体での記録も盛ん。話の内容を俯瞰的、そして直観的にとらえることができ、議論の活発化に繋がるとしてビジネスの場など様々な場面で重宝されている。

菅野愛希さんが描いたグラフィックレコーディング

どんな仕事・取り組みをしているか

グラレコでは福島市の行政が企画している勉強会や女性の企業を応援する取り組みの講演会などの取り組みをグラレコでいろんな人に発信して知ってもらうという取り組みをしています。他にも知人が企画したイベントや福島で頑張って活動している人たちの取り組みや魅力などをグラレコでまとめてSNS発信をして、より多くの方に知ってもらいたいという活動をしています。最近ではグラレコ自体の興味を持ってもらう方が多く、グラレコ講座も実施しています。
本業では、イラストを描いたりアート作品を創作しています。最近では四季の里のイメージイラストを描かせてもらったり、事業のパンフレットを作成したり、挿絵を描いたりしています。最近ではNFTにも挑戦しています。

高校の「探究」についてどう思うか

私にとって学校とは勉強をする場所というイメージが強かったです。学生の頃は学校と塾と家の往復だけという人も多くいたと思います。
本コースの探究の授業があることによって、学校や家庭の限られた空間だけではなく、実際に社会で働いている人と繋がれることはとても魅力です。
学生だけど社会の一員として社会と繋がって学生のうちからいろんなことを吸収し、挑戦できる環境があることって素晴らしいことだなと思います。

もし高校生のときに「探究」の授業があったらどういう人に出会いたいか

絵を描いて生計を立てている人と出会いたいと思います。私が高校の頃はいい大学に入って、いいところに就職して立派な人間だと思えるような人になりたいという固定概念がありました。そのフィルターのせいで、出会う人というのはいい大学に入っている人ばかりでした。
高い目標を持つことはとても大事なことです。しかし私にはどうしてもフィットしないことがあり、悩んでいました。私はありがたいことに絵を通して様々な人と繋がることができました。そしてそこから正解が1つではなく、様々な生き方があることを学びました。
高校は大人と子供の狭間。そこで様々な大人に出会うことで自分に後悔のない生き方の兆しを得られる確率が高くなると思います。そんな誰かに出会えうために、沢山の世界を学生のうちに見ることができる環境があったら嬉しいと思います。

もし高校生に戻ったとしてチャレンジしたいこと

いい意味で高校生だからこそ許されることがたくさんあると思います。だからこそ、思いっきり失敗を恐れずにチャレンジしてみるということが大切だと思います。
私が高校生の頃にチャレンジしていたことはコミュニケーションの苦手を克服するために「高校生ピッチ」というイベントで大人たちの方の前で政治の勉強会をやりたいというスピーチをしたことでした。もちろん失敗もしましたが、今となってはいい経験になっているので、高校に戻ったら興味あることや好きなことにもっとチャレンジしたいと思います。

進路選択で大切なこと

私が進路選択で大切だなと思うことは”自分らしさ”だと思います。そもそも”自分らしさ”ってなんだと思うかもしれませんが、人それぞれ得意なこと、不得意なことがあると思います。自分のできないところに注目するのではなく、自分が特段頑張っているわけでないけど人から感謝されたり、喜んでもらえたりといった自分の強みを大切にしながら、進路選択をしてほしいなと思います。

つながりはどんなところから生まれていくと思うか

出会った人、1つ1つのご縁を大切にしていくことで、また新たなご縁につながると思います。また自分が何をしたいのか発信することが大切だと思います。せっかくいいつながりを持っている人と出会えたとしても、自分が何をしたいのかを持っていなければ、つながることができません。相手の方に自分のやりたいことを伝えることがとても大事だと思います。コミュニケーションが苦手でも、熱意や本気度は相手に伝わります。常にアンテナを張って自分のやりたいことを発信し続けることができれば、きっと素敵なご縁が生まれると思います。

高校生に向けてのメッセージ

みなさんは現在、高校生として日々の生活や勉強、部活動を頑張っていると思います。得意なことや不得意なことがあると思いますが、存在自体が尊く、愛されている存在ということを忘れないでください。その土台があることを忘れず、その上で様々な人との出会いや繋がり、そしてチャレンジをして1度しかない高校生活を有意義に過ごしてほしいと思っています。応援しています。

取材を終えて

社会の枠にフィットするために、自分を成長させることはとても大切なことだ。
しかし自分が本当に幸せな人生を歩むことはどういうことなのだろう。ありのままの自分をもう一度見直し、素直な気持ちに立ち返ってみるのもいいかもしれない。
苦手なものやできないことに目を向けるのでなく、自分の「好きなこと」「興味のあるもの」にフォーカスをあてることで、自分の幸せな未来へとつながる扉がもしかしたら見つかるかもしれません。

取材:進学探究コース1期生 牧野空真(2023年4月27日)