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学びの本質を見つめ直す!先生の役割とは?

プロフィール

はじめに

聖光学院高校の数学・情報・探究の教師で普通科進学探究コース長の三瓶航先生。教科書のない「探究」の授業カリキュラムを学科再編時から手掛け、生徒に未来へのプロットを打ち続けている三瓶先生のストーリーをぜひご覧ください。

生徒を見守る三瓶先生

仕事・取り組みのきっかけ

(1)高校教師
高校時代のある数学の授業のときです。数学が苦手な私でしたが、その時間はたままた解ける問題が出てきました。そのとき隣の友人に「教えてほしい」と頼まれ、私は得意げに教えたようとしたその瞬間、「三瓶に聞くより先生が教えたほうがわかりやすいぞ」と数学の先生に言われました。
高校時代の私はその時、「数学が苦手な人が先生になれば、生徒の立場にたって物事を考え、教えられるじゃないか」と考え、大学に進学することを決意しました。大学卒業後は、そのまま学校の先生になろうと思っていたのですが、このままの先生になってしまうと学校から一歩も出ることなく、生徒たちが出ていく社会を経験しないままの人間になってしまうことに気づきます。
生徒の立場に立つという軸を大切にし、まずは自分が社会人経験をしなければと考え、民間企業で働きました。会社に入って2年。「教師になりたい」という考えは変わることなく、会社を思い切ってやめ、教師の道を本格的に歩むこととなりました。

現在は数学、情報、探究を担当しています。

(2)進学探究コース
聖光学院の魅力となるものをもう1つ作ってほしいと校長先生にお願いされたのがきっかけです。ありがたいことに聖光学院は"スポーツ聖光"と言われ地域の方々はもちろん、全国にもファンがおりスポーツを通して学校を応援してくれています。
しかしテレビ越しの応援が多く、実際の聖光生と地域の方々が直接交流する機会が少ない現状がありました。だったら直接地域と交流できるコースがあったら楽しいだろうなと思ったのがコース設立のきっかけです。
新しい学習指導要領に「総合的な探究の時間」が生まれ、地域に根付いた福島らしい授業を落とし込めるようになったことも大きいです。週に4時間、学校設定科目「探究」の授業を通して、今まで学校では時間がなく、することができなかった環境を提供しています。勉強や部活以外の新しい学びのカタチ。それが進学探究コースです。

月刊高校教育のミドルリーダー特集で取り上げられました

仕事・取り組みの内容

(1)教師
現代の先生とって大事だと思うことは、「学ぶって楽しい」と生徒に思ってもらえるきっかけづくりだと思っています。今はどこでも誰でもインターネットの環境さえ整えば、気軽に時間や場所の制約をこえて学べる時代です。現在の映像授業は素晴らしく、学校の授業よりも優れているとさえ感じています。そして近い未来にはAIが生徒の弱点や改善方法を個別に的確に教えてくれることになるでしょう。
「じゃぁ、先生の仕事って??」とモヤモヤした日が続きましたが、今の私の最適解は生徒の「学ぶって楽しい」というきっかけ生むことだ思っています。どんなに優れた映像授業も本人が「学びたい!」という意思がない限り、その映像に辿り着きません。その架け橋になる職業が今の先生の仕事だと思っています。
また情報が直ぐに獲得できるからこそ、体験や挑戦をせずに知識だけで自分ができる、できないを勝手に決めてしまう時代だと思っています。登った山から見える景色をどう感じるかはその人その人の感性ですが、登る前から景色を予想して勝手に登って見た気になっているのは違うと思っています。学校だからできる安心、安全に挑戦できる環境で沢山の体験と挑戦をさせて実際に登った景色を自分の目で見る機会をつくることが今後の学校の在り方だと思っています。

(2)進学探究コース
2022年4月に聖光学院高校は学科再編をし、普通科進学探究コースが誕生しました。現在3年目となり、今年度高校1年生から3年生が揃いました。それぞれの学年で「正解」のないモノ・コトに対し、日々探究の授業を通して生徒は学んでいます。

1年生の探究
1年生では「視野を広げること」がテーマです。たくさんの大人と会って、視野を広げることや考えることを目的とした学びを展開しています。課題や問いをこちらが設定し、正解のないテーマに対して生徒たちがクラスやグループで考え、正解を導くワークショプを多く実施しています。

伊達市役所での発表の様子

2年生の探究
2年生では、「自分なりの最適解・納得解を探す」がテーマです。生徒自身で自分のやりたいや好きについて問いやテーマをつくり、それを考えた上で計画を立て、自分なりの正解に向かって1年間活動をしています。

エールピッチで探究活動を発表したときの様子

3年生の探究
3年生は「自分の未来をデザインする」がテーマです。2年生で1年間向き合った個人探究を発表します。1年間の個人探究の活動を通して自分のやりたいや好きにどう向き合えたのかを発表します。
いろんな経験や体験をしたけれど結局「わからなかった」という結論でも私はいいと思っています。それだけ自分と向き合えることが「探究」であり、それが5年後、10年後の卒業した後に、何かをきっかけにこの「探究」でやってきたタネが成長し、実を結んでくれれば充分だと思っています。そんなことを願いつつ、学生の挑戦を常に見守り、未来へのプロットを打ち続けています。

ビジネスコンテストで企業の方の前でプレゼンをしている様子

探究についてどう思うか

とてもいいと思います。私の高校時代は「探究」という教科がありませんでした。そして社会や世間の風潮がいい大学に行くことが正解で幸せであると言われ続けられ、それしか選択肢がない状態で生きてきました。それを疑うことさえありませんでした。ですから生き方や選択肢というものを自分で考えて、視野が広がる「探究」は高校生にとっていい時間だなと思います。
教える立場としては、正解がないのにある程度「探究」はこういうものだよと教えなくてはいけません。私自身も「探究」を探索している途中です。正解がないことを楽しみ、みなさんと一緒に探究し続けていきたいです。

タンキュウブ時代に制作した短編映画”ワンダテフルライフ”△

高校生で「探究」の授業があったらどういう人に出会いたいか

ゲームをつくる人に出会いたいです。私は教師の他にもう一つ夢がありました。それはゲーム制作に携わることでした。ゲームをつくる人はどんな考え方をしていて、どのようにストーリーを生み出しているのかお話をしたいです。その経験が高校生で出来ていたら、もっと勉強を頑張ったり、違う思考を持つことできたのかなと思います。また最近思うのが、教師になることに対して自分のなりたいが半分と親が喜んでくれるが半分であった可能性です。自分自身にもっと矢印を向けて、好きなことについて話を聞いて自分の気持ちも確かめたいなと思いました。

高校生に戻れたとしてチャレンジしたいこと

いろんな人に会うことにチャレンジしたいです。私は高校を卒業するまで、先生や親以外の大人と話す機会がありませんでした。私の父は会社員ということもあり、私の中で会社や組織に属することが当たり前で、自分で会社をつくるということは考えもしていなかったです。
もし高校生のときに経営者などいろんな大人と話すことができたら、視野が広がり自分で起業していたかもしれません。現在の「探究」の動きを高校生のときにやれたらどうなっていたのか、高校生に戻れたらどんどんチャレンジし、行動したいです。

伊達市のリレートークで三瓶先生がお話をしています。△

進路選択で大切なこと

進路は自分で決めることが大切です。もちろん親や先生のアドバイスを聞くことも大事です。私が学生の頃は人生80年時代でしたが今は100年時代です。しかし、学ぶ期間は同じということに違和感を感じています。単純に20年延びているので少なくとも30歳まで位までは学ぶ期間があってもいいと思います。そしてそれを許容する社会にもなってほしいと思います。
今様々な人とであることで知ったことは、人生はまわり道をしても自分で決めた道なら幸せになれるということです。だからこそ、高校卒業後の進路は最終的に自分で意思決定して欲しいと思います。もしその景色が自分が思っているの景色と違っても、修正はいくらでもできます。そして自分で決めたことで後悔はないはずです。高校の今の自分自身の考えをしっかり尊重して、それに対して努力して進路選択をしてほしいと思います。

つながりはどんなところから生まれるか

自分がやりたいことを発信できたり、行動することが大事です。そうすることで、それと同じ温度(熱意)の人を惹きつけ、つながれると思います。
人は組織の中にいるとその中でつながりをつくろうとしがちです。それはとても良いことですが、その世界しかないとは決して思わないでください。自分で行動し、一歩踏み出すことさえできれば、新しい環境にきっと出会えるはずです。一歩踏み出すのはとても勇気のいることですが、その先にはきっと自分が想像できないような素敵な世界が待っているはずです。

高校生に向けてメッセージ

世の中は常に変化し続けます。今の時代はそれを恐れるのではなく上手に乗りこなす”しなやさ”が必要だと思います。常に当たり前を疑い、そこに違和感やありがたさを感じることができれば、社会にでることの楽しさに気づくはずです。
今回取材で話したことは明日には変わっているかもしれません。そんな世の中だからこそ、しっかり自分自身と向き合い、それぞれが考える幸せに向けて自分で考え、行動し続けていってください。

取材後記

今回で私の最後の取材。「探究」の先生であり、タンキュウブの一員として活動してきた三瓶先生。時には厳しくご指導していただき、正直今まで緊張を感じる場面が多々ありました。しかし今回の取材を通して三瓶先生という人柄と先生の根っこの部分を感じることができた取材でした。
先生は私たちに「探究」という授業を通して、幸せな人生へとつながる"学び"を教えているのだと改めて感じることができました。この取材を通して、対話をし、本質を探ることの大切さを学ぶことができました。

最後は三瓶先生と2ショット

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