”いきづらさ”は「社会の構造」から考える
プロフィール
毎年本コースの2学期の最初の探究の授業で”生きづらさ”についての授業をしていただいています。▽
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はじめに
それぞれが抱える「いきづらさ」を支援するKAKECOMI代表、ソーシャルワーカーの鴻巣麻里香さん。こどもにとってホッとする居場所をつくる鴻巣麻里香さんのストーリー、是非ご覧ください。
仕事を取り組みのきっかけ
仕事を取り組むきっかけは大きく2つありました。1つは自分が感じていた孤立感を他の人にも感じてほしくないと思ったこと。もう1つはソーシャルワーカーになって、世の中に子供を助ける仕組みが足りていないと思ったことです。
私がこどもの頃、いじめを受けたり、両親が不仲であったり、生きていくうえで様々なしんどさを抱えていました。学校や家にも居場所が無く、孤立感を感じたまま、大人になってしまいました。現代でも私のように孤立感を感じている子供たちがたくさんいます。
今の世の中にそのような人を救う仕組みづくりが出来ていないと考えた私は、苦しんでいる子どもたちをなんとか助けたい、安心できる居場所を白河市で作りたいと考え、現在の活動を行っています。
仕事・取り組みの内容
私が活動している主なことは①こども食堂,②シェルター,③相談所の3つです。
(1)こども食堂
学校でも家でもないホッとする新しい居場所になってほしい、お腹がいっぱいになってほしいという想いからこども食堂を行っています。
学校の給食以外でごはんが食べられる環境がなかったり、栄養が偏っていたりと、理想的な食生活を送ることができない子どもたちがたくさんいます。私たちはできるだけ当事者中心の活動をしたいと思い、こども食堂では大人が子供にとっていいことという目的ではなく、こどもにとって安心して居心地のいい環境をつくることを心がけています。
そのためスタッフが子どもたちと同じ目線で立てるよう、高校生を採用しています。また、企業や農家さんに協力してもらい、食料品などを提供いただいています。
(2)シェルター
暴力や貧困などが理由で家に居ることができない15歳以上の女性と、その親子を対象としたシェルターを運営しています。全国的にもシェルター自体の数がとても少ないです。助けを必要としている全員に行き渡らないこと、暴力を受けている人などの緊急性の度合いや助けを必要としている全てに行き渡らないなど様々な課題はありますが、私たちが今できる活動を1つ1つ行っていき、1人でも多くの方を今の環境から救える場所にしています。
(3)かけこみ相談室(ソーシャルワーカー室)
私たちは暴力・子育て・仕事・こころの病気・障がいなど生活にかかわるどんな相談でも受けつけています。
また相談内容によっては、窓口を紹介・相談先を探すサービスもしています。人が困っているときに相談に行こうと思っても、どこに相談したら良いかわからず、今の生活に苦しんでいる人がたくさんいます。そんな人の支えになればと思い、活動をしています。
高校の「探究」についてどう思うか
「探究」の授業はとても良いと思います。しかし、少し心配していることもあります。例えば私たちのところにも「こどもの貧困について調べているので子ども食堂を見学させてください」、「インタビューさせてください」という依頼が高校生がよく来ます。
しかし問題である同じ年代であり、当事者でありながら、なぜ他人事として考えてしまうのか。「探究」はまず問題や課題を自分ごととして考えることが大切なはずです。
「探究」が調べ学習として終わってしまうのではなく、今現在進行形で起こっている社会問題の当事者として、連帯して考え、自分に何ができるかを行動できるまで発展していってほしいです。自分ごととして「探究」してみてください。
高校で「探究」があったら出会いたいですか
今の私が高校生に戻ったら、アート関係の方に出会いたいです。学生当時の私であれば、「探究」に興味が向かなかったのではないかと思います。自分のことに精一杯で人のことに興味を持つ余裕がなく、とにかく良い大学に行って、家を出ることばかり求めていました。
今の私は自分の好きなこと、美しいものを追い求めた結果、今の世の中と私がやりたいことがマッチし、仕事となりました。だから自分を表現し、自分が好きなことを追求している大人に高校生で出会いたいと思いました。
高校生でチャレンジしたいこと
もし高校生に戻れるとしたら、やれるところまで演技の道で挑戦したいです。
高校生の時は結局、生産性を追い求めてしまった私ですが、実は大学受験にストライキして、演技の道に進みたいと思っていた時期がありました。
当時の私なりに真剣に調べ、やっていきたいと本気で考えていました。しかし周りは、周りが期待していり大学に行くと思い込んでいたのです。私は抵抗しましたが、受験の疲れの気の迷いだと誰も真剣に話を聞こうとしませんでした。
もし戻れるなら、自分の芯を大事にしてやれるところまで挑戦してみたいです。
進路選択で大切なこと
大前提として伝えておきたいのは、今の選択が間違っていても大丈夫だということです。
生まれたから十数年しか経っていないのに、自分には何が向いていて、どんな職業が向いているのかなんて決められるはずがありません。人生においてとても大事なことをその一瞬で決め、それにしばられてしまうのはもったいないと思います。
今振り返ると、私の高校生や大学生時代選択は大抵間違っていたと思います。だから今決めることが一生の決定になるとは決して思わないでください。
ただ自分でした選択に挑戦することはとても大事なことです。自分でした選択は失敗ではなく、経験となります。自分の今の芯を大事にしながらも、行く先々で迷ったり、戻ったりすることは当然だという気持ちで考えてみてください。
つながりはどんなところから生まれると思うか
つながりは作ろうとするのではなく、自ら動く、発信することがとても大事だと思います。全ては自分1人でやることから始まります。現在は同じ志を持った大切な仲間たちと活動していますが、それは私が1人でまずは行動したからです。
つながるとき、何をしているかわからない人の周りには誰も寄って来ません。またつながりだけを作ろうとすると価値観の違いが生まれ、失敗してしまうでしょう。自分がやりたいことに明確にして動いていれば、それを見てくれている人は必ずいます。その発信を見て、「同じだな。つながりたいな。」と思う人がきっと集まってきます。まずは自ら動くこと、とても重要なことです。
高校生に向けてメッセージ
高校生の皆さん、人生をもっと気楽に考えても大丈夫です。周りの大人たちは様々なことを皆さんに言ってきます。悪気があるわけではなく、大人は社会の先輩としてアドバイスをしていると思っています。しかし今の時代、未来にどんなことが起こるかわかりません。その中で大切なことは自分に嘘をつかない、後悔のない人生を日々送ることだと思います。自分の今持っている考えを大事にし、突き進んでください。
また私は大人より子どもの方が大変だなと思っています。例えば学校です。勝手に教室に押し込められ、その中で生きていかなければならない。生きていくために多数の意見を聞かなければならないし、人間関係もその中でつくらなければならない。
実は社会の方が学生時代の世界より楽しいです。自分に合わなければ仕事も人間関係も変えることができます。更に働いてお金を稼ぐことができれば自分がしたいこともある程度はできるのです。社会は誰とどう程度付き合うかを、自分で全部決められます。社会は思っているほど厳しくはなく、逆に学生時代よりもっと楽しいことが待っていると思ってください。
取材後記
大人と子供の狭間にいる高校生。そんな私たちだからこそ、当事者目線に立って自分ごととして社会について真剣に考える大切さを学びました。
気にしないで生活できていることこそが特権である。自分は色眼鏡で物事を見ていないかということを自分に問う取材となりました。