まちを経営し、見霽かす
プロフィール
「探究Ⅰ」授業:地元起業家の”ことば”
「探究Ⅰ」授業:地域イベントを高校生視点で考える
はじめに
東京から移住し、国見町で自分の理想の”まちづくり”を目指している上神田健太さん。外から人を呼ぶだけではなく、環境にやさしく質の高い"まちづくり"にも取り組んでいる上神田さん。上神田さんが創り出す理想の”まちづくり”とは。上神田さんの地域に対する熱い想いや今の高校生に伝えたいことをインタビューし、記事にまとめました。どうぞご覧ください。
仕事・取り組みのきっかけ
私は大学卒業後、”まちづくり”を仕事にしたいと思い、東京都庁に就職しました。しかし実際は”まちづくり”の事業を実行しているのは行政だけではなく、むしろ民間企業だということを知りました。行政の道に進んだからこそわかったこと。自分は直接的に”まちづくり”をしたいという思いから、妻の実家がある福島県国見町に移住しました。
仕事・取り組みの内容
私はCo-Learning Space”アカリ”の運営をしています。藤田駅前にある元縫製工場をリノベーションして誕生しました。1階にレストラン、ラウンジ、ライブラリー、2階にシェアオフィス・スタジオを設けた複合施設です。
1階のレストランでは地元の食材を使った料理を提供して頂いています。(トラットリア ダ マルティーノ)またラウンジやライブラリーでは地域の学生や町民が気軽に訪れ、団欒したり、学習したりする自由なスペースとなっています。
2階はシェアオフィスとして貸し出しています。地域の衰退の要因の1つである、売り上げよりも家賃の方が高いという問題を解消するために生み出しました。スタジオは若い世代が集まって、国見の”まちづくり”を考えるエリアデザインラボなどのイベントでの使用や、国見町の公営塾の教室として利用して頂いています。
現在進んでいる事業としては、一般の方が住むエコハウスとCafe&Guesthouseを併設したエコタウン事業を実施しています。断熱性の高い建物を建設し質の高い暮らしを目指し、環境にやさしい”まちづくり”を目指しているところです。
高校の「探究」についてどう思うか
現在は自分が思い描く”まちづくり”の仕事を実現していますが、学生時代は”まちづくり”のことをやっているのは行政だろうという思いで、都庁に就職しました。入ってみて初めて行政という仕事と自分がやりたかったことにギャップがあることを感じました。
高校の探究という教科では、たくさんの大人たちと関わることができ、幅広い職業や考え方を知ることができると思います。それに伴い、知識や経験、体験を積めるとともに自分の突き進む選択肢の幅が広がると考えています。
もし高校の授業で「探究」があったらどういう人に出会いたいか
デザイン系の方に出会いたいなと思います。普段、お店に行くといろんな商品が並んでいます。商品のパッケージデザインは様々なプロセスを経てできあがっていると思います。またデザイナーさんの思いも沢山散りばめられていると思います。
実際にそのデザインを考えている人お会いし、デザインが出来上がるまでの過程やその裏に隠されているエピソードなどを聞いてみたいなと思います。
もし高校生に戻ったとしてチャレンジしたいこと
アルバイトをしてお金を稼ぐのではなく、自ら仕事を作ってお金を稼ぎたいと思います。例えば高校生でできることといえば、イベントなどの写真撮影でもビジネスにつながってお金を稼げます。確かにアルバイトをした方が決まった収入は得られると思います。しかし高校生にしか味わえない挑戦をすることで、お金以上の”何か”を経験・体験をすることができるのではないでしょうか。。
進路選択で大切なこと
他の大人たちに(先生にも)怒られてしまうかもしれませんが、勉強をしたからといって将来、必ず仕事ができる人間になれるかといったら違うような気がします。必ずしも”勉強ができる=仕事ができる”にはならないのです。
実際学歴がない人でも、大人になり、会社を経営し、人をまとめることのできる人を私はたくさんみてきています。ですから学歴のためだけにたった1度しかない高校生活を勉強だけに注ぐことは勿体無い気がするのです。
「探究」という教科は高校生活において大切な”何か”を学べる良い機会だと思います。その”何か”は個々に違って良いと思います。周りの大人たちの言われるがままではなく、抗い、自分で決めた進路選択を切り開いていくことがとても大切だと思います。
つながりはどんなところから生まれてくると思うか
自ら行動することでつながりが生まれると思います。私が都庁で働いていたころ、よく行くお店に仕事とは関係なくお話を聞きにいったりしました。今も自ら初対面の人でもメールで”まちづくり”のことや質問を送っています。メールの返信が返ってくるのは半々くらいで返ってこないときがありますが、それでもめげない気持ちが大切です。返事が返って来なかったらどうしようと思い、なかなか行動に移せない人もいるかもしれません。しかし失敗を恐れずにやっていればつながりが生まれ、今までみたこともない世界を見せてくれると思いますよ。
高校生に向けてのメッセージ
人にはそれぞれの違った価値観や考え方あります。一概には言えませんがあまり周りの大人たちや先生の言うことを、鵜呑みにしすぎないほうがいいと思います。なぜならそれはその人が生きてきた世界の範囲で言っているだけかもしれないので。それを参考にすることは良いことだと思います。しかしそれをその通り生きてしまったら、果たしてそれは自分の人生を生きたということと言えるでしょうか。誰の言う通りにすれば正しい、素晴らしい人生が送れるという保証はありません。人任せにするのではなく、自分がどうしたい、どうありたいかをちゃんと自分で考え、生活してみてはいかがでしょうか。勇気を出して社会に触れ、その問題を自分ごととして捉えてみてください。
取材後記
周りの大人たちが子供に対してあってほしい姿と自分がありたい姿は違う。もちろん大人の意見を聞くことも大切だ。しかし時には自分の中にあるものを信じて行動し、社会を知り、触れていくことが自分の納得のいく人生なのかもしれません。一見、遠回りだと感じていた道が、振り返ってみると1番の近道になっている日が来る。そう思えるよう、まずは自分を自分が信じてみようと思いました。